+ 小論文:第1回・後編(担当:宮村周志)
ここからは、SFC小論文に対してどのようにアプローチしていけば良いのか、ということを、実際に過去問をみながら考えていきたいと思います。
では、ここでSFC小論文における3大特徴をもう一度確認しておきます。
SFC小論文の3大特徴
- 具体的なメインテーマ(=重点的に論じなくてはならない事柄)
- 複数の論述条件
- 膨大な資料(=発想のヒント/回答への活路)
SFC小論文にはこのような特徴があるということを考えると、実際に答案を作成するにあたっては、まず「問題文」を熟読することによって、「具体的なメインテーマ」と「論述条件」とを明確に区別して整理し、それによって答案の中で「論点」となるべき事柄を抽出することが必要だと考えられます。さらに、「メインテーマ」や「複数の論述条件」相互の関連性を考えて、どのような順序で「メインテーマ」や「論述条件」へ回答するのが最も適切かということを検討すれば、答案の構成を、資料を読む前の段階で組み立ててしまうことができると思います。また、それだけではなく、そのような構想手順によって「メインテーマ」と「論述条件」を整理しておけば、それらを一つのガイドラインとして、「膨大な資料文」から自分の論述に必要な部分をピックアップしていくことができます。つまり、たとえ「資料」が膨大な量であったとしても、「問題文」を熟読しあらかじめ「論点」を抽出して、「自分の論述に必要な素材(=資料から読み取るべきポイント)」を明らかにしておけば、膨大な資料を非常に効率良く読み解くことが可能だというわけです。
このようなことから、SFC小論文に対するアプローチとしては、「問題文」を熟読して「メインテーマ」と「論述条件」を整理し、そこから抽出された「論点」をガイドラインとして「資料文」を読む、という構想手順が有効だと考えられます。では、このようなことを踏まえた上で、実際に過去問をみていきたいと思います。説明の順序としては、まず「問題文」から「メインテーマ」と「論述条件」を読み取り、そこから分かる情報を検討します。その後、「メインテーマ」や「論述条件」同士の関連性を考えて、答案の構成方法の一例を示してみたいと思います。
では、実際に過去問を見ていきましょう。今回は、2006年度総合政策学部の問題を素材として使ってみたいと思います。
問題
世論とは、何だろうか。それは今日どのようにして形成されるものであろうか。この点について次の二つの問いに答えよ。
問1
資料1、資料2、資料3を参考にして、最近、君が「これが世論である」と考えた「世論の事例」をあげて、君の考える世論の定義を述べながら、世論の形成過程について1000字以内で論じなさい。
問2
資料4の中で取り上げられた、「ネットと新聞の賭け」について、2007年に君はどちらが勝つと予想するか、自分の立場を明示して、その理由を500字以内で論じなさい。
('06・総合政策学部)
1. 情報検討
問題文を熟読することで「メインテーマ」と「論述条件」を読み取り、さらに、そこから推測できる情報がないか検討していきます。
(この問題のように、問題冒頭に書き出し部分がある時、そこには当該の問題全体を貫くような重要な「論点」が示唆されている場合が多いので、注意深く読むことが必要になります。)
・「世論とは、何だろうか。」、「今日どのように形成されるものであろうか。」
- →この問題全体を貫く最も大きなテーマは「今日の世論について」→資料文は今日の世論に関連するもののはず
- →「今日」という時間設定にも注意?
・ メインテーマ(MT):『世論の形成過程について』
∵メインテーマは、問題文中において「〜について」や「〜に関して」のような言葉によって示されている場合がほとんど
・論述条件(Condition)1:『資料1、資料2、資料3を参考にして、』
- →3つの資料文それぞれの論点に言及することが必要
- →おそらく、資料1、2、3は「世論の形成過程」に関連するもののはず
・Condition2:『「これが世論である」と考えた「世論の事例」をあげて』
- →「世論の事例」とは世論の具体例のこと→論述には、世論の具体例を含めることが必要
- →冒頭部分に「今日の」という時間設定があったこと、また、問1に「最近」という言葉が含まれていることを考えると、「世論の事例」は「今日の」という点を意識したものが適切
・C2:『君の考える世論の定義を述べながら』
- →MTである「世論の形成過程」を論じる上で、世論を自分なりに定義することが必要
- →C2との関連性をみると、「世論の事例(C2)」は、世論に対する自分なりの定義(C2)の具体例だと考えると整合性がとれる
・MT:『「ネットと新聞の賭け」について、君はどちらが勝つと予想するか、その理由』
- →資料4は「ネットと新聞の賭け」に関するもの→この問題全体を貫くテーマが「世論について」であることを考えると、「ネットと新聞の賭け」は世論に何らかの関連性がある話題のはず
- →MTに対して回答する際には、世論との関連性を少しでも示すのが適切では?
・C1:『自分の立場を明示して』
- →論述の際には、自分の立場が明示されていることが不可欠
- →問1との整合性を考えると、問1で自分が定義した「世論」の内容や、「世論の形成過程」の内容に矛盾するような立場をとると論述の一貫性が失われるので注意すべき
・C2:『2007年に』
- →時間設定が、「2007年」というふうに、「未来」に設定されている点に注意
- →問1で定義した「今日の」世論の内容から考えられ得る「未来の」状況に関しての論述が求められているのでは?
2. 答案構成
では、問題文から得られた情報のみを使って、答案の構成方法の一例を示してみたいと思います。
ここでは、メインテーマ(MT)と論述条件(Condition)をもう一度簡単にまとめて、どのような順序で論述するのが適切かを考えることで、答案の構成を組み立てていきたいと思います。
○本問全体を貫くテーマ:『世論について』
○問1
- MT:『世論の形成過程について』(1000字)
- C1:『資料1、2,3を参考にする』
- C2:『世論の事例』
- C3:『世論の定義』
(論述順序の検討)
- 資料1、2、3を参考にする目的は、MTに関する自分の主張をサポートするためであるべき。
- また、『世論の事例(C2)』は『世論の定義(C3)』の具体例だと考えると、論述の順序としては、定義が具体例に先行したほうが分かりやすいのでは?
○問2
- MT:『「ネットと新聞の賭け」における自分の立場の理由』(500字)
- C1:『自分の立場を明示』
- C2:『「2007年に」という点の考慮』
(論述順序の検討)
- 順序としては、自分の立場を端的に明示した後、その理由を述べた方が明快
- 理由を論じる際に「2007年に」という視点も含める
このように検討すると、以下のような答案構成が、一つの例として考えられると思います
○問1
第1段落 [ MTへの端的な回答(200字)]
↓↑
第2段落 [ 資料1,2,3への言及(C1の充足)(200字)]
↓
第3段落 [ 今日の世論に対する定義(C3の充足)(200字)]
↓
第4段落 [『世論の事例』の提示(C2の充足)(200字)]
↓
第5段落 [ まとめ(総論と結論)(200字)]
○問2
第1段落 [ 立場の明示(C1の充足)(200字)]
↓↑
第2段落 [ 自分の立場の理由(MTへの回答とC2の充足)(200字)]
↓
第3段落 [ まとめ(総論と結論)(100字)]
ここまで、「問題文」を熟読して得られた情報のみを使って作成してみたわけですが、このように「問題文」から「論点」を抽出して答案の構成まで組み立ててしまえば、後はそれをガイドラインとして資料を読み解くことがでるはずです。また、「問題文」を基に組み立てた構成に合わせて、自分の論述の内容を考えれば、無理の無い論理展開で合格レベルの答案を作成することができると思います。




